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大阪家庭裁判所 昭和37年(家イ)233号 審判 1962年12月01日

国籍 日本 住所 大阪市

申立人 トムソン・藤田幸子(仮名)

国籍 米国 住所 米国ウイスコンシン州居所米国カリフォルニア

相手方 ロバート・エフ・トムソン(仮名)

主文

申立人と相手方とを離婚する。

理由

申立人は相手方に対し、一年以上の悪意の遺棄を離婚原因として昭和三六年五月二六日大阪地方裁判所に離婚訴訟を提起し、同裁判所は昭和三七年一月二〇日事件を当裁判所の調停に付する旨決定したので、当裁判所は調停手続を開始したが、後記認定のような事情のため調停は成立するに至らなかつた。

申立人の戸籍謄本とアメリカ合衆国副領事作成の婚姻証明書及び申立人本人審問の結果によると、申立人は日本国籍を有し、相手方はアメリカ合衆国の国籍を有する者であつて、双方は昭和三〇年(一九五五年)七月五日日本国福岡県福岡市役所において、アメリカ合衆国副領事ケイ・エス・ミドタン立会のうえ、福岡市長に対し適式の婚姻の届出をしたこと、及び申立人が上記肩書地に住所を有することが認められる。

このように当事者の一方である申立人が日本人が日本国籍を有する本件離婚については、日本の裁判所が裁判管轄権を有するが、その準拠法については法例第一六条によると離婚原因発生当時の夫の本国法によることになる。ところが夫である相手方の本国法たるアメリカ合衆国の国際私法原則によると、当事者の双方または一方が住所を有する地(法廷地)の法律を適用すべきものと解されるから、本件については法例第二九条により結局日本の法律が適用されることになる。

そこで申立人本人審問の結果と本件調停の経過並びに当裁判所の照会に対す相手方からの回答書、相手方が申立人に送つた手紙の記載によると相手方は婚姻前から外国航路の乗組船員をしていたが、申立人との婚姻後も日本に特定の住所を有せず、一年に二~三回乗船が日本に寄港する際、申立人と僅かな日数の共同生活を送るにすぎなかつたこと、相手方は寄港のつど四~五万円を申立人に手渡すだけで、法律上の妻としての待遇が十分でなかつたこと、申立人は婚姻当初はアメリカ合衆国へ移住するつもりであつたが、母の負傷事故が発生する等家庭の事情が変化したため移住をしぶるようになり、これらのことから相手方との仲が円満を欠くに至り、昭和三四年終頃には夫婦間は破たんを来していたこと、本件離婚訴訟の提起前からすでに双方は離婚を承認しており、現在もその意思には変りはないが、相手方は上記のとおり船員であつて日本に寄港しても調停期日に出頭できないため、調停における離婚の合意は成立しなかつたこと、をそれぞれ認めることができる。

当裁判所は上記認定の事実その他諸般の事情を考慮し、本件は家事審判法第二四条の調停に代る審判によつて離婚させるのを相当と認め、調停委員長長田鎮吾、同大島はつゑの意見をきいたうえ、主文のとおり審判する。

(家事審判官 藤野岩雄)

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